国選弁護人と私選弁護人の違いとしては、主に活動開始時期、選任の主体、費用の3つがが挙げられます。
そもそも国選弁護人とは、憲法37条3項の「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」という条文により、憲法上認められた被告人が依頼できる弁護人のことです。
憲法が被告人(起訴された人)としていることから、かつては起訴されるまでは私選弁護人を依頼するほかありませんでした。しかし刑事訴訟法の改正を経て対象が拡大され、現在では勾留請求を受けた人であれば被疑者の段階であっても国選弁護人を依頼できることとなっています。ここで勾留とは、被疑者や被告人が警察署の留置場などで身柄を拘束されることを指します。
このように国選弁護人を依頼できるタイミングは勾留請求後や起訴後と固定ですが、私選弁護人であれば国選弁護人を依頼できない逮捕された段階やさらにその前の捜査を受けている段階という早いタイミングからでも自身のために活動をしてもらえるという違いがあります。また、国選弁護人は国から選任された弁護士に依頼することしかできず、私選弁護人のように解任・変更などすることはできません。
国選弁護人制度は、被告人らに認められた制度であり、誰でも、そして国の費用負担により無料で利用できることが原則です。しかし刑事訴訟法により国選弁護人への依頼には資力要件が課されており、その要件は預貯金などの流動資産の額が50万円以下となっています。この時国選弁護人を依頼するために虚偽の申告をすると行政罰を受けることになりかねないため、国選弁護人の選任の請求をするときは正しく申告しなければなりません。
また資力要件を満たしていなくとも、例外的に私選弁護人に依頼できなかった場合や弁護人なしで裁判を行うことできないと定められている重大犯罪の事件の場合には国選弁護人を依頼できますが、裁判所から費用の支払いを求められることがあります。
一方私選弁護人は、弁護士費用を依頼者自身で負担しなければならず、その費用は依頼時期や接見の回数などによって異なりますが数十万円以上になることが多くなっています。
国選弁護人は確かに費用が掛からないなどのメリットがありますが、弁護士の得意不得意を考えて選任されるわけではないため、刑事事件の経験に乏しい弁護士が選任されることがある、弁護活動の開始時期が遅いなどのデメリットもあります。そのため、刑事事件で良い結果を得るためには、早期に刑事事件の経験豊富な弁護士に弁護活動を依頼すべきでしょう。
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